グルテンの正体とは？

グルテンとは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質の一種です。特に、パンや麺類、ケーキなどの食品を作る際に重要な役割を果たします。グルテンは水を加えてこねることで「グリアジン」と「グルテニン」という2種類のたんぱく質が絡み合い、粘り気や弾力性を生み出します。これが食品に特有の食感を与えます。
例えば、パンのもちもち感や、ケーキのふんわりとした仕上がりは、グルテンの働きによるものです。ピザやパスタ、ラーメンといった食品でも同様の効果が得られます。しかし、グルテンは消化が難しいたんぱく質でもあります。
そのため、一部の人にとってはアレルギー反応や体調不良の原因となることがあります。具体的には、セリアック病やグルテン不耐症の症状として、腹痛や下痢、肌トラブルが挙げられます。これがグルテンフリーが注目される理由の1つです。

グルテンフリーの意味と背景

グルテンフリーは、もともとセリアック病という自己免疫疾患の治療の一環として提唱されました。セリアック病では、グルテンを摂取すると小腸が炎症を起こし、栄養吸収が妨げられます。欧米ではセリアック病患者が全人口の約1%とされ、食品業界でもグルテンフリー商品が数多く開発されています。一方、日本では米が主食であるため、セリアック病の発症率は非常に低いです。それでも、グルテン不耐症やアレルギーが原因で体調に不調を感じる方がいます。そのため、日本でもグルテンフリー食への関心が徐々に高まっています。
さらに、グルテンフリーの普及は健康志向の高まりとも関連しています。有名なアスリートや芸能人が取り入れていることが話題となり、「腸内環境の改善」や「美容効果」が期待できると広まっています。ただし、グルテンフリーには注意点もあります。特に、小麦粉を使った食品を代替する際に栄養バランスが偏る可能性があるため、正しい知識を持つことが重要です。

【グルテンを含む主な食品とグルテンフリー食品の例】

グルテンフリーのメリット

グルテンフリーの実践による利点は多岐にわたります。特に、健康や美容を意識する方々にとって、以下のようなメリットが挙げられます。
体調改善につながる場合がある
グルテンフリーは、体調不良を改善する可能性があります。特に、グルテン不耐症やセリアック病の人にとっては、腸内環境の改善や消化器官の負担軽減につながります。これにより、腹痛や下痢、倦怠感といった症状が軽減されることがあります。また、セリアック病患者でなくても、グルテンに敏感な人がグルテンフリーを実践することで、慢性的な体調不良が改善されたという報告もあります。

美容効果が期待できる
グルテンは肌トラブルの原因となる可能性があると指摘されています。グルテン摂取により腸内環境が悪化すると、ニキビや湿疹などの肌トラブルを引き起こす場合があります。そのため、グルテンフリーを取り入れることで、肌の調子が整い、透明感のある肌を目指せる可能性があります。

カロリーの摂取を抑えられることがある
グルテンフリーを実践すると、自然と小麦を主成分とした食品の摂取が減ります。これにより、高カロリーなパンやパスタなどを避けることができ、摂取カロリーを抑える効果が期待されます。ただし、注意が必要なのは、グルテンフリー食品が必ずしも低カロリーであるとは限らない点です。食材選びの際は慎重に行うことが重要です。

グルテンフリーのデメリット

一方で、グルテンフリーを実践する際にはいくつかの注意点があります。誤った方法で取り組むと、身体に負担をかける可能性もあります。
栄養バランスが偏りやすい
小麦には食物繊維やビタミンB群、鉄分などが含まれています。これを摂取しなくなると、栄養不足に陥る可能性が高まります。特に食物繊維が不足すると、便秘や腸内環境の悪化につながるため、グルテンフリーを実践する際は、野菜や果物などの栄養豊富な食品を積極的に取り入れる必要があります。

食事の選択肢が限られる
グルテンを含む食品は非常に多く、パンや麺類だけでなく、調味料や加工食品にも含まれています。そのため、グルテンフリーを徹底しようとすると、外食や食品選びが難しくなるという課題があります。また、グルテンフリー食品は一般的な食品よりも高価な場合が多いため、食費の負担が増えることも考えられます。

必ずしも効果が得られるとは限らない
グルテンフリーは万能ではありません。健康な方が取り組んでも、体調改善や美容効果が感じられない場合もあります。また、過剰にグルテンフリーを意識しすぎると、ストレスを感じることになり、本末転倒になる可能性があります。

日本人にとってのグルテンフリーの意義

日本人にとってグルテンフリーは、一見するとあまり馴染みがない食事法のように思われるかもしれません。その理由の1つは、日本の主食が「米」であることです。欧米ではセリアック病患者が約1%存在し、グルテンフリーの必要性が高いですが、日本ではセリアック病の発症率が極めて低いとされています。しかし、日本人にとってグルテンフリーが意味を持たないというわけではありません。

健康意識の高まりとグルテンフリーの関連性
現代の日本では、パンや麺類などの小麦製品を主食にする方も増えています。これに伴い、グルテン不耐症や小麦アレルギーの症状に悩む方が増加している可能性があります。そのため、体調改善やアレルギー症状の軽減を目的として、グルテンフリーに注目する価値があります。

日本人特有の健康課題への適応
また、日本人の中にも、グルテンに敏感な方が少なからず存在します。そのような方々にとって、グルテンフリーを取り入れることは腸内環境を整えたり、肌トラブルを改善したりする助けとなる可能性があります。一部の研究では、グルテンを控えることで倦怠感や集中力の低下が改善されたという報告もあります。こうした背景から、日本人においてもグルテンフリーは健康維持やライフスタイル改善の一環として意義を持つのです。

グルテンフリーを取り入れる具体的な方法

グルテンフリーを実践するためには、まず小麦を含む食品を見極め、代替食品を取り入れることがポイントです。以下に、日本人が取り入れやすい具体的な方法をいくつか紹介します。

1.主食を米やそば粉に置き換える
日本の食文化において、米はグルテンフリーの代表的な主食です。パンやパスタを控え、白米や玄米を中心にした食生活に切り替えることで、グルテンの摂取を自然と減らすことができます。また、そば粉を使用した十割そばもおすすめです。ただし、そば粉以外に小麦が混ざった「二八そば」には注意が必要です。

2.調味料や加工食品の表示を確認する
醤油やソース、カレーのルウなどの調味料にも小麦が含まれていることがあります。グルテンフリー生活を実践する際は、食品ラベルに記載された「小麦」の有無を確認する習慣をつけましょう。また、コンタミネーション（製造過程での混入）に注意を払うことも大切です。「本品は小麦を使用した設備で製造されています」といった記載がある製品は避けることをおすすめします。

3.米粉や代替食品を活用する
米粉やタピオカ粉などの代替食品を利用すれば、パンやケーキ、揚げ物もグルテンフリーで楽しむことができます。特に米粉は、吸湿性が高くもちもちとした食感が特徴で、パンやお菓子作りに適しています。最近では、米粉を使用したパンやスイーツが手軽に購入できるようになっており、自宅でも簡単に取り入れられるようになりました。

4.外食時にはグルテンフリー対応のメニューを選ぶ
外食が多い場合は、グルテンフリー対応の飲食店を選ぶことも一つの方法です。特に、専門店や健康志向のレストランでは、グルテンフリーメニューが充実している場合があります。予約時に確認すると安心です。

【グルテンフリーを実践する際のおすすめ代替食品】

国内外のグルテンフリー基準と市場の違い

グルテンフリー食品の基準は、国や地域によって異なります。この違いが市場の展開や消費者の選択に大きな影響を与えています。
国内基準の特徴
日本では、グルテンフリー食品に対する明確な基準が存在しないのが現状です。食品表示法ではアレルゲンとして「小麦」の表示が義務付けられていますが、グルテンの具体的な含有量を規定する法律や指針はありません。そのため、「グルテンフリー」と表示されている製品であっても、微量のグルテンが含まれている可能性があります。ただし、日本国内では「ノングルテンJAS認証」が導入されており、これはグルテン含有量が1ppm以下であることを保証するものです。

海外基準の厳格性
一方、海外ではグルテンフリー食品に対して厳しい基準が設定されています。例えば、アメリカやEU諸国では、1kgあたりのグルテン含有量が20ppm以下であることが「グルテンフリー」と認定される条件です。これらの基準は、消費者が安心して選べる環境を整えるために重要な役割を果たしています。さらに、アメリカの「GFCO（Gluten-Free Certification Organization）」は、10ppm以下というより厳しい基準を掲げ、製品の品質保証を強化しています。

市場規模の違い
市場規模も大きく異なります。欧米では、セリアック病患者が人口の1%程度存在するため、グルテンフリー食品の需要が高く、専門セクションがスーパーマーケットに設置されることも一般的です。一方、日本ではまだニッチな市場として扱われていますが、健康志向の高まりにより拡大傾向にあります。特に、アスリートや美容意識の高い方々を中心に需要が増えつつあります。

飲食店や食品メーカーでの活用事例

グルテンフリー食品は、飲食店や食品メーカーによってさまざまな形で活用されています。以下では、国内外の成功事例をいくつかご紹介します。
飲食店での取り組み
多くの飲食店がグルテンフリーメニューを導入しています。特に、健康志向の高いレストランやカフェでは、ピザやパスタ、パンケーキなどの定番メニューを米粉やそば粉に置き換えたグルテンフリー対応が進んでいます。また、アレルギー対応としての需要も高く、グルテンフリーだけでなく「アレルゲンフリー」を打ち出す飲食店も増えています。さらに、食材だけでなく調理環境にも配慮し、コンタミネーション（異物混入）を防ぐための設備や運用を導入している店舗もあります。

食品メーカーの取り組み
食品メーカーも、グルテンフリー商品を次々と開発しています。例えば、大手メーカーでは以下のような商品が注目されています。
・米粉を使用したパンや麺：もちもちとした食感が特徴で、健康志向の消費者に支持されています。
・グルテンフリーのお菓子：クッキーやケーキ、スナック菓子など、一般消費者が手軽に購入できる商品が増加しています。
・グルテンフリー認証の調味料：特に醤油やソースは、調理に欠かせないアイテムとして需要が高まっています。
また、中小企業では地元産の米粉やそば粉を活用したオリジナル商品を開発し、地域ブランドとして差別化を図る動きも見られます。

【グルテンフリー対応の成功事例】

まとめ｜健康と美容をサポートするグルテンフリーとMASH SOYの活用を

Riko Kobayashi

小林 理子

略歴

2014年短期大学部家政科食物栄養専攻卒業 栄養士資格取得

2014年給食委託会社入社

2015年公立小学校の栄養士へ転職

2017年管理栄養士国家資格取得/フリーランス管理栄養士へWebライター、セミナー講師、食事指導、レシピ開発等で活躍

2019年オランダへ渡航（活動休止）

2023年フューチャーフーズ株式会社に入職

2024年フリーランス管理栄養士として活動再開

活動実績

高齢者施設、学校、保育園などでの給食提供を経験し、実務を通じて専門性を磨いた後、独学で管理栄養士国家試験に合格。以降はフリーランスとして、食事指導・セミナー登壇・レシピ開発・Webライターなど幅広い分野で活躍。

オランダ滞在中に妊娠・出産を経験し、日本帰国後は 大豆製品を使ったレシピ開発 や 食品臨床試験の食事調査 を行い、現在は再びフリーランスとして活動中。

監修者一覧を見る