大豆の魅力

加工食品が次々と発売され、動物性タンパク質に代わる
植物由来のタンパク源として関心が高い大豆。

しかし、世界中のどこでも栽培できて栄養豊富にもかかわらず、
実は食品や料理にあまり活用されていないのが大豆の現状です。
世界中に大豆を広めていくためにも、
食べ物としてのポテンシャルや魅力について紹介します。
大豆の魅力
大豆の魅力
大豆の魅力

大豆の
生産と消費

健康食、大豆ミートなどで脚光を浴びている大豆は、
植物性タンパク質が摂れる栄養豊富な食材としても注目されています。
大豆はどの地域でも栽培できる万能な穀物です。
世界中でさまざまな品種が栽培されており、地域ごとに栽培できる品種は異なるものの、
含まれる栄養素が基本的に同じ点も見逃せません。

しかし、2021年の大豆の世界での生産量である約3億8,400万トン中、
搾油用と飼料用で約3億2,900万トンが消費されています(米国農務省調べ)。
つまり、大豆の生産量の約86%は、人間が直接食べていないのです。

大豆の食べ方

大豆が小麦・米・トウモロコシの世界三大穀物とは異なり、
主食に定着していない要因としては、特有の「エグミ・青臭さ」が挙げられます。
大豆には酸化すると「エグミ・青臭さ」を発する酵素が含まれており、大豆が美味しくなく、
世界中に広まっていない直接的な原因と言えるでしょう。
しかも大豆の殻は硬く消化に良くなく、摂取しすぎると胃腸内で膨張しお腹を壊すこともあります。
また栄養素である大豆サポニンは、苦みがあるため食に適していない成分でもあります。
そのため、大豆を美味しく食べるには工夫した調理加工が欠かせません。

【大豆を使った加工食品一覧】

発酵させた食品

  • 大豆を使った加工食品一覧 発酵させた食品 納豆
    納豆
    蒸して煮た大豆を納豆菌で発酵させた食品です。健康食品の代表格として人気
  • 大豆を使った加工食品一覧 発酵させた食品 味噌
    味噌
    蒸して煮た大豆と米や大麦を麹菌(こうじきん)で発酵させた食品です。基礎調味料の1つ
  • 大豆を使った加工食品一覧 発酵させた食品 醤油
    醤油
    脱脂大豆などを麹菌(こうじきん)で発酵させた液体発酵調味料です。基礎調味料の1つ

豆腐・豆乳関連の加工品

  • 柔らかソイペーストのさつま揚げ風
    豆乳
    大豆を水につけ、加熱・粉砕して搾った乳状の液体です。豆腐に固める前の乳液の状態
  • ソイペーストとハムチーズの揚げ春巻き
    ゆば
    豆乳を熱したときに表面にできる皮膜をすくった食品です。大豆の加工食品の1つ
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    おから
    大豆から豆腐を製造する過程で豆乳をとった絞りかすです。「卯の花」とも呼ばれています
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    豆腐
    豆乳をにがりで固めた食品です。固め方の違いで木綿豆腐、絹ごし豆腐などになります
  • ソイペーストとハムチーズの揚げ春巻き
    凍り豆腐
    高野(こうや)豆腐の別称です。豆腐を凍結、低温熟成させた後に脱水した保存食品
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    油揚げ
    木綿豆腐を薄く切って水分を抜き、油で揚げた食品。みそ汁の具や いなり寿司に使用されます
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    厚揚げ
    木綿豆腐を厚く切って水切りしてから高温で揚げた食品です。煮物やおでんで人気

その他の大豆の加工食品

  • 柔らかソイペーストのさつま揚げ風
    枝豆
    若い(青い)うちに収穫した大豆の未成熟の豆です。ビールのおつまみとして定番
  • ソイペーストとハムチーズの揚げ春巻き
    もやし
    大豆を暗所で発芽させた新芽です。万能食材としてさまざまな料理に活用されています
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    煮豆
    大豆を煮て味をつけた料理。煮ることでたんぱく質の吸収率が9割以上に向上します
  • ソイペーストの和風きつね揚げ
    煎り豆
    煎った大豆です。主に節分の時期に活用されるほか、おやつやおつまみでも親しまれています
  • ソイペーストとハムチーズの揚げ春巻き
    きな粉
    大豆を焙煎して製粉した状態です。餅にまぶした「きな粉餅」は定番レシピ
大豆を使った加工食品は日本ではお馴染みの食品ばかりですが、世界では同様とは言えません。
大豆は世界的には「美味しくない」「家畜の餌だ」「畑の肥料」という認識がまだまだ根強いのが事実です。

「普通に大豆を加工調理したのでは加工食品や料理の味を壊してしまう。
でも栄養豊富な大豆は食に取り入れたい」というのが、大豆食がより普及するための課題と言えます。
食事は毎日摂るので、「栄養豊富で身体に良い」だけではなかなか続きません。
「美味しい食品であること」が大切なのです。
大豆を加工する場合、工業的にはまず皮も剥きます(ピーリング)が、この時点で、大豆の酸化が始まるため「エグミ・青臭さ」が発生するのが難点だと言えます。
これを上手に加工したのが、豆腐(エグミを含むおからを省き、水をたくさん使って酸化を抑制)や味噌、納豆、醤油(発酵技術によりエグミの素になる酵素を変性)などの日本食です。
日本では、伝統的な大豆加工食品が発達しており、上記のように日々の食生活にも多いに取り入れられています。
大豆に関する食文化

大豆の味

加工食品として日本では人気の大豆ですが、そのものの味としては「エグミ・青臭さ」が特徴だと言えます。
日本の加工食品ではそうした独自の味を上手くかき消していますが、他の国では日本同様の加工技術が根づいているわけではないのです。

中でも枝豆はエグミの素の酵素も少なく、加工調理するときに皮を剥いたりすることもあまりないので、「エグミ・青臭さ」がほとんどないのが特徴。
そのため、枝豆の風味こそが「大豆が本来持っている味」なのかもしれません。
大豆の学名がラテン語で「Glycine max(グリシン マックス/甘い豆)」(18世紀のスウェーデンの植物学者リンネが命名)なのも、そうした経緯によるのでしょう。

枝豆は未成熟な大豆の果実を若採りしたものです。
そこから熟成させて乾燥させると丸大豆になりますが、その過程で枝豆独特の美味しさ、香味はなくなり、水分が減少し栄養成分も変化します。
丸大豆と枝豆の栄養価の違いは下記の通りです。
可食部100g当たりの栄養価(日本食品標準成分表2015より)
エネルギー (kcal) 炭水化物 (g) 脂肪 (g) タンパク質 (g)
丸大豆 422 29.50 19.70 33.80
枝豆 110 8.58 4.73 10.25
大豆の味

大豆の栄養

近代中国の父・孫文の言葉で「大豆は畑の肉、されど肉の害なし」と伝えられている通り、大豆は「総合健康栄養食」です。
豊富な栄養素が大豆の特徴であり、良質な植物性タンパク質を筆頭に牛肉と同じような必須アミノ酸、脂質中コレステロールを低下させるリノール酸やオレイン酸が多く含まれています。ビタミンB群、E、Kやカルシウム、食物繊維の含量も豊富です。
また、肝機能を高め、利尿を促し、高脂血症を防ぐ大豆サポニン、脳の働きをよくするレシチン(リジン)なども目立ちます。

動物性タンパク質を摂取する際に過剰摂取しがちな、脂肪分、コレステロールなど生活習慣病に関係する成分摂取を大豆食では大幅に削減できます。
それだけではなく、植物由来の良質タンパク質の吸収を促進したり、肝機能を向上させたり、脂肪分、コレステロールの低下を促す作用さえあるのです。
一般的に大豆は、植物由来タンパク源として有名ですが、炭水化物や脂肪分も多く含まれている点も見逃せません。
大豆に含まれる主な機能性物質、100gあたりの栄養価は次の通りです。
大豆の栄養

大豆に含まれる主な機能性物質

  • 総コレステロールを低下させるレシチン(リジン)
  • ビフィズス菌を増殖させる作用のあるオリゴ糖
  • 抗酸化作用、またコレステロールなど血中脂質の低下が期待できる大豆サポニン
  • 骨粗しょう症の予防や更年期の不調を改善すると言われるイソフラボン
100gあたりの栄養価
エネルギー 1,765 kJ (422 kcal)
炭水化物 29.5 g
食物繊維 17.9 g
脂肪 19.7 g
飽和脂肪酸 2.59 g
一価不飽和 4.80 g
多価不飽和 10.39 g
タンパク質(100gあたりの栄養価)
タンパク質 33.8 g
ビタミン(100gあたりの栄養価)
ビタミンA相当量 1 µg
β-カロテン 7 µg
チアミン(B1) 0.71 mg
リボフラビン(B2) 0.26 mg
ナイアシン(B3) 2.0 mg
パントテン酸(B5) 1.36 mg
ビタミンB6 0.51 mg
葉酸(B9) 260 µg
ビタミンC 3 mg
ビタミンE 2.3 mg
ビタミンK 18 µg
ミネラル(100gあたりの栄養価)
ナトリウム 1 mg
カリウム 1900 mg
カルシウム 180 mg
マグネシウム 220 mg
リン 490 mg
鉄分 6.8 mg
亜鉛 3.1 mg
1.07 mg
マンガン 2.51 mg
セレン 5 µg
他の成分(100gあたりの栄養価)
水分 12.4 g
水溶性食物繊維 1.5 g
不溶性食物繊維 16.4 g
ビオチン(B7) 27.5 µg
文部科学省:日本食品標準成分表2015年版 (七訂)

大豆の特徴的な
健康効果トピックス

  • 大豆オリゴ糖を含むことで整腸作用がある。大豆オリゴ糖を関与成分とした特定保健用食品が許可された ※1
  • 大豆をよく食べる女性グループで脳梗塞・心筋梗塞のリスクが低下 ※2
  • デザイナーフーズ計画のピラミッドの1群に属し、キャベツ、にんにくと並んで、がん予防効果のある食材の第3位に ※3
  • スペインのオリーブ油、日本の大豆、ギリシャのヨーグルト、インドのダール(豆料理)、大韓民国のキムチの5品目が世界の5大健康食品に ※4
  • 納豆の摂食頻度と月経状態・月経随伴症状は有意性がみられ、摂食頻度の増加は症状軽減の可能性も ※5
  • 雄の2型糖尿病マウスに大豆サポニンを2グループに投与。片方で血糖値上昇抑制作用が認められた ※6
  • 発酵性大豆食品の摂取量が多いほど総死亡リスクが低いとの指摘 ※7
大豆の特徴的な健康効果トピックス
がん抑制効果のピラミッド
  • ※1 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
  • ※2 独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
  • ※3 日本食生活学会誌2009年20巻1号
  • ※4 2006年3月27日米国の健康専門月刊誌「ヘルス」
  • ※5 順天堂大学スポーツ健康科学研究(12)2008年3月
  • ※6 日本未病システム学会雑誌 2006年12巻1号
  • ※7 独立行政法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部

大豆の病気・アレルギーについて

豊富な栄養成分が強みの大豆ですが、その反面デメリットもあります。
その1つに大豆アレルギーが挙げられます。
全年齢を対象とした「日本のアレルギー原因食物」の調査分析で大豆の割合は、2008年で全体の1.5%で11位(国立病院機構相模原病院 (2011) 食物アレルギーの栄養指導の手引き2011)、2017年の1.6%で10位でした( 国立病院機構相模原病院 (2018). 平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書)。

特定原材料に準ずるアレルゲンとされており、アナフィラキシーショックを起こす恐れもあります。
可能な限り原材料表示するのが努力義務があり(消費者庁:食品表示基準について)、アトピーや喘息などアレルギー素因のある方々は特に注意が必要でしょう(「ショック症状を呈した大豆アレルギー7症例の検討(食餌アレルギー)」『Japanese Journal of Allergology』第25巻第4号、1976年4月)。